「じゃ、やるってばよ・・・」
「「おうっ!」」

「・・・・は?」

思考がフリーズした。













IGNORANCE IS BLISS

1000hit御礼企画(DRF)


























上忍待機所は何時もの通り、のんびりとした雰囲気が漂っていた。のんびりとした雰囲気の中、呼び出される任務の内容は暗殺だったり、盗まれた機密書の奪還だったりなど重いものだ。
きっと、段々麻痺してくるんだろうなあ・・・
賭け花札で勝っている最中などにお呼びがかかると、仲間から笑顔で「頑張れよー」と送り出される。逆に負けていると「逃げるのかっ」と叱咤を食らう。勝っていても負けていても、途中で呼び出されればその勝負は無効。それが詰所の暗黙のルール。だが忙しい上忍達であるので、滅多に決着が付くことはない。最後まで勝負が続くか、そういう賭け的要因も重なって益々ヒートアップするのだろう。
上忍にまで上り詰める人たちは、皆どこか螺子が外れている。待機所でまともな人間を見たことがない。
自分のことは棚に上げておいて、シカマルはそう思っている。螺子が外れている、といっても普段の生活においてのみなので誰も文句は言わない。基本的に仕事がこなせれば何でも容認される社会なのだ。そうでなければ、ここまで変人が集まることもなかろう。
「奈良シカマルーーっ救助救助!!」
「なんすか、ったく・・・。毎回毎回」
フルネームで呼びつけられ手に持っている文面から顔を上げると賭け将棋を見物中の塊の中心にひらひらと手が舞っていた。シカマルがそういう頭脳ゲームが好きなことをアスマやらカカシなどが振りまき、こういう助っ人的役割が振り当てられた。はっきり言ってかなり迷惑である。声がかかれば、何よりも優先させて足を向けなければならない。前日の任務の報告書を書いている途中であろうと、解析部から頼まれた暗号書の解読中であろうと。年長者に逆らうと、あとでとんでもないしっぺ返しを食らう。
丁度此処へ来る途中で渡された暗号文を椅子の上へ投げ置き、席を立つ。解析を専門とする特別上忍どもにも読めなかったのだ。此処へ置いておいたとしても、誰にも読まれる心配はない。
シカマルが近寄ると見物していた人の群が道をあけた。
「先輩、弱いんすからやたらと人に勝負を持ちかけないでくださいよ。結局こういうことになるんですから・・・」
盤上の王将は追い詰められ、どうにもならないところまで来ていた。普通に考えれば、もう終局だろう。
「悪い悪い」
呼びつけた相手は全く悪いと思っていない風にかっかっか、と笑う。
「あまり弄るなよ。折角勝ってるんだからな!!」
はいはい、と勝負相手に軽く返し、シカマルは王将を守るべく駒を動かした。勝ってるんだったら何故助っ人を容認するのか、と聞いたことがある。答えは、あまりにも弱すぎるから面白くない、ということだった。それでも同じ相手と勝負し続けるのだから、本人達はそれなりに助っ人の介入も含めて楽しんでいるのだろう。巻き込まれるほうはたまったもんじゃない。
数手駒を進め、程々に王将を救ってやる。
「ハイ、どうぞ」
「すまんねー」
まったく如何し様もねえな、と思っているが、自分も結構この雰囲気を楽しんでいることは否めない。
こうやって螺子が緩んでいくんだよな〜
閉まりっぱなしが良い、ということはない。上忍達もここで気ままに過ごすことによって何時も張っている気を緩め、次の任務に備えるのだろうが。それにしたって、熱中することが幼稚すぎる。賭け花札や賭け将棋などはまだ落ち着いているほうで、以前部屋に入ってきたときなどはどこから持ち出してきたのやら、大の大人が必死になって独楽をまわしていた。詰所にはそうやって持ち込まれた遊び道具が端っこに集められている。
そのうちナルトが遊びだしそうだな・・・。
そのときに相手をさせられるのは自分である、と言うことは極力考えないようにし、投げ出してあった巻物を手に取ろうと手を伸ばした。
「シカマルーーっ!!」
噂をすれば、というかなんというか。タイミングがよすぎる。入り口のほうを一瞥し声の主を確認すると目的のものを手にとる。解析部には悪いが今日中には出来そうにもない暗号文を巻きなおした。騒がしいナルトに待機所に居た上忍達も振り返る。
「シカマルシカマル、今暇だってば?!」
楽しそうに、目を輝かせて近づいてくるナルトにシカマルは眉を寄せる。こういう顔をしているときはろくな事が起きない。何かを企んでいる時だ。現に入り口の外にいるナルト以外の気配をシカマルは掴んでいた。
「忙しいといっても、お前はお構い無しだろうが・・・」
「そんなことないってばっ!ヒトギキが悪いてぞ!!」
シカマルは椅子の背もたれに腕をつき、こめかみを押さえた。
「んで?何のようだよ。んで、あいつらは一体なんなんだよっ」
視線の先には入り口から顔を覗かせているサクラといの。ナルトは分かるが、サクラといのはまだ上忍ではない。基本的に上忍待機所には上忍、もしくは特別上忍しか立ち入りを許されていない。滅多に、滅多にないが、機密が会話の中に隠れていることがあるからだ。
サクラといの、それにナルトとくるとろくな事が起こらない。
サクラはともかく、いのはとても性質の悪い笑みを浮かべ、シカマルを見つめていた。伊達に十年以上幼馴染をやっているわけではない。
「シカ、いま暇って言ったよな?」
「シカマルゥ、大人しく言うこと聞きなさいよ〜」
ゴキゴキと指を鳴らし、取り押さえようとしているナルト。
コイツラ、本気だ・・・
いのに至っては入り口で心転身の術の構えまで見せている。
逃げようと思えば逃げられる。いのの心転身は焦点からずれてしまえば交わせるし、ナルトは影真似で押さえてしまえば終わりである。だが、そのあとぎゃーぎゃーと言い寄ってくる二人を交わすのがこの上なく面倒くさい。
「一体なんだってんだよ・・・」
「きゃっだからシカマルって好きー」
「絶対だってばよ?!男に二言は無いよな?!!」
「ああ、もう分かったから!!いい加減五月蝿いんだよお前ら。んで?何企んでんだ」
呆れ気味に問うと、ナルトといのは顔を見合わせにやっと笑った。
「・・・・っ」
・・・何やる気だ、コイツラ。なんか俺、すげえ身の危険を感じたんだけど・・・
顔を引きつらせていたシカマルの目の前で、ナルトがウェストポーチからなにやらを取りだす。
「じゃーん!」
「・・・・鋏?」
首をかしげる。何がそんなに楽しいのだろうか。タダの鋏である。ナルトの顔を見上げると、面白そうに目線をいのたちの居る入り口のほうへ向けた。それにつられて嫌な予感を抱えつつシカマルも目線をそちらへやる。
「じゃーん!」
「・・・・・。何だそれは」
いのとサクラがもっているのは丁度抱えてもてる位の大きな箱。備品保管部に入った折にああいった箱があったような気がするが、中身までは覗いていない。こっちへこいよ、とナルトが手招きをし、いのとサクラはやっと室内に入ってきた
えへへー、といいながら、いのが箱を開けた。
「どうだー!」
「どうだ、って・・・。それで何をする気だ」
いのとサクラが入ってきた時点で、シカマルにはもうすでに逃げ場は無い。立とうにも椅子の周りを3人に囲まれてしまっていた。警戒心を剥き出しにし、幼馴染を睨み上げる。
「あらシカマル、これでやることは一つでしょ?」
頭良いくせに、そんなことも分からないの、と隣に居たサクラがにっこりと笑う。
箱の中にはファンデーションやらチーク、アイブローなど化粧道具一式がキレイに整頓されて収まっていた。色の任務時に使う赤などの濃い色からナチュラルなものまで一式だ。女に任せるには体力的に厳しい任務などでは男が女装して行うときもある。知らないわけではない。だが・・・。
分かりたくない・・・
「じゃ、やるってばよ・・・」
神妙な顔つきで鋏を構えたナルトにいのとサクラは箱から道具を取り出した。
「「おうっ!」」
変な団結力を見せる三人によってテキパキと下準備が整えられる。
「・・・・は?」
一瞬思考がフリーズした。
ていうか、俺の意思は無視かよ・・・
周りでは日々刺激を求めている上忍達が面白そうなことが始まった、とニヤニヤと此方を眺めている。その一人からナルトに声がかけられた。
「おいうずまきー、何始める気だ?」
「賭けの結果を確かめるんだってばよ」
「は?賭け?」
聞いてねえぞ。勝手に人を巻き込みやがって。
下を向いていた顔を上げたら、いのに「動かないで」と怒られた。
「うちの同期の中で誰が一番キレイになるか、ていう賭けだってば」
ナルトは話しながら結い上げてあったシカマルの髪を下ろし、丁寧に櫛で梳いてゆく。特に手入れもせずに、伸ばしっ放しである髪は括ってあるときには分からないが結構長い。
「へ〜。お前らの期はきれいどころ揃ってるじゃねえか。お前といい、うちはといい」
「そっか?そうでもないと思うけど。でもサスケは結構キレイだったってばよ?」
ナルト達の会話にいのが加わる。
「そうそう、サスケくんにはビックリよね〜。ナルトは変化で大体予想付くけどさあ〜」
「でも、自分よりきれいなのって、結構複雑・・・」
本当に複雑そうにサクラがポツリと呟く。
ふーん、と興味深々に聞いていた上忍達が一気に盛り上がる。
「俺らも賭けようぜ!!誰が一番か。一口百両」
おお、と楽しそうに、だが真剣に予想し始めた上忍達に今はまだ中忍に納まっているいのとサクラが呆れる。
「上忍って暇なのね・・・」
「いや・・・、暇じゃないんだけど」
基本的になんでも楽しいことが好きだからな。
「じゃ、やるってばよー?」
何を、と聞く暇も無く。一声かけて、後ろから聞えてきたのはジャキン、という鋏の音と、パラパラとなにかが床に落ちる音。
「おいっ何しやがったテメエっ」
振り向くと真剣にいのにまた怒られるので必死になって叫ぶ。
「何って・・・。心配しなくても俺上手いってば!」
自分の髪切ってるし。というとまた作業に戻り、ジャキジャキと軽快に鋏の音が鳴る。
「そういう問題じゃねえよっ!マジ切りやがったな!!」
「うん、マジ切った」
なんか悪かったの?と首をかしげるナルト。
「何シカマル、願掛けでもしてたのー?」
気持ちワルー。とやってもいないことでいのに気持ち悪がられる。
「するかっ!ていうかお前も眉を剃るな!!」
「え〜、だってぇ」
「中途半端にすると余計気持ち悪いし。やるからには完璧にしないと」
と言い切ると、サクラはいのを促した。
おいおい・・・マジかよ
眉は剃られるわ、髪は切られるわ。いや、髪は別にどうでもいいんだけどよぉ。括れる程度の長さがあれば。
なんだかもう既に抵抗しても無駄な域に達している。やられている以上、失敗しないように祈るしかない。眉のそり落としなんてことは冗談じゃない。とりあえず、暫く大人しくしていよう、と肝を据えた。
ふと気がついて、後ろでうーん、とうなっているナルトに声をかけた。
「なあナルト。俺が最初じゃねえよなあ。他のやつらは?」
「ああ、写真あるぜ?見る?」
そういうと、ポーチから何枚かの写真。ナルト、サスケ、キバ、シノ、そしてチョウジ。
「・・・・。よくもまあ。暇だなあお前ら」
いつの間にこんな手のかかることをやったのか。皆忙しい忍の身だ。下忍時代のようにずっと里にいるというわけではない。自分が一週間ばかし里を離れていた間にこんなことが行われていたとは。
一枚一枚写真を捲ってゆきじっくりと観察する。
チョウジのものについてはあえて何も言わないが、キバは姉そっくりに仕上がっていた。何もしないでもそっくりだが。シノは同期の中では一番背も高い。サングラスの下は見たことが無かったが、随分と男前だったらしい。映っている姿は無残だが。
「おー、サスケがよくゆるしたなあ、こんなこと・・・」
もともと顔の造りがきれいなヤツだが、此処まで行くと立派なものだ。そこらへんにいる女よりよっぽど美人だ。表情は若干疲れているがそれは致し方ないだろう。知性を備えた眼は十分に色っぽい。
これからくの一使うのやめて、サスケ使ってやろうかなあ・・・
存分に相手を誘ってもらおう。色の任務もサスケならば全く良心が痛まない。身の危険を感じても、サスケならば自力で脱出するだろう。後々文句を言われるであろうが。賭けの実験に付き合ってやるぐらいに、サスケは丸くなったらしい。何年も前の抜け忍騒動のときはどうなるかと思ったが、いまや里外にナを轟かすまでに成っている。命を賭けたかいがあったというものだ。
「ん?・・・・っくっくっくっ」
突然笑い出したシカマルにナルトは、五月蝿い、と小突く。
「お色気の術のときは別に恥ずかしくないんだけどさ、地でやるとかなり恥ずかしいってば・・・」
顔を真っ赤にしながら、だが手は相変わらず鋏を動かし続けながら。下には結構な量の髪が落ちている。
シカマルの手にはナルトの写真。里のなかでは一人しか居ない金髪。くりっとした澄んだ青い目。白い肌。色を専門とするくの一にだって、こんな艶をもった女はいない。元から長いまつ毛はビューラー、マスカラによってさらに強調され、頬もチークによってほんのりと赤い。
チョウジなどのように仕上がればお笑いですむのだろうが、此処までくるとそうではすまない。自分の思った以上の出来に恥ずかしくなったらしく、上目遣いでちょこんと写真に納まっていた。
これじゃ・・・、逆効果だっつうの・・・。
ナルトがここまで必死になっていのたちの手伝いをしているのも、自分が一位になりたくないからであろう。何かと一位が好きなナルトではあるが、未来の火影を目指す身が女装で一番になっても何も嬉しくない。むしろ迷惑だ。
ま、精々頑張れよ・・・
必死になっているナルトには悪いが、シカマルは自分が化粧によって美人になるなんてこれっぽっちも思ってはいない。基本的に父似なのだから。それなりに、お笑いになる程度、に仕上がれば良いと思う。サスケなどのように女からやっかみを受けるなんて面倒極まりない。
「シカマルー、ちょっと目ぇ瞑ってよー」
「あー、ハイハイ・・・」
だから、いのの言うこともちゃんと聞いたし(面倒だから)、ナルトにも好きにさせておいたのだ。髪なんて好きなだけ切ればいい。どうせ伸びる。髪程度で気が済むなら安いものだ。例えバサバサ切られていようが。
「ねえサクラー、チークどうしようか?」
「オレンジじゃない?ナルトみたいに可愛い系じゃないし」
シカマルはどっちかっていうと硬派な知的系だから、と付け加える。
アカデミードベ2が硬派な知的とは、出世したものだ。
「そーねー。シカマルはどっちがいい?」
「どっちでもいいから早く終わってくれ」
「あー、はいはい」
シカマルは気が短すぎー。といのが愚痴る。
実験が始まって早一時間。一時間耐えた。それで短いというのか。それにも拘らず、任務が入らなかった周りの上忍達は面白そうに此方を眺めているし。
いのとサクラの「暇なのね」はあながち間違いでも無さそうだ。
「よし、出来たってばよっ!!」
改心の出来、とナルトは胸を張って答えた。有難迷惑ながらも化粧の方に集中して、カットのほうを全く見ていなかったサクラといのから感嘆が漏れる。
「ナルト、凄いわねー。上手すぎっ!!」
「ほんと・・・。今度からナルトに切ってもらおうかしら」
サスケくんもみんな髪短かったから、切ること無かったもんねぇ。と人の思わぬ特技にいのとサクラは感心した。
「ホラホラ、シカ〜。触って!!残念ながら鏡は見せられないからさ」
そう促され、手を頭に持っていく。何時もと違う感じに少々違和感を覚えた。
「おー・・・、髪少ねー」
「そんだけ?!こんだけ頑張ったのに」
見えていない、手の感覚だけでどう感動しろというのか。
むー、とナルトが膨れる。毛先揃えて、かなりすきたんだからな。と自慢げに話した。確かに髪の量は多いほうだからかなりの重労働だろう。此処まですかれると頭が軽い。
「サクラちゃーん、そっちはどうだってば?」
覗き込もうとしたナルトの顔をサクラが抑える。
「こら、まだ見ないの!!もう直ぐなんだから。出来上がってからのお楽しみ」
いのとサクラが顔を見合わせてにやっと笑う。なにやら楽しそうな二人に頬を引きつらせ、目線を外す。外した先には此方の作業をじいと観察していた上忍達。中忍と上忍が寄ってたかって遊んでいるほうに視線が集中している。完成間近な女装姿をちらりと目にすると皆「おー」と歓声を上げた。
どうやら、お笑いのほうではないらしい。
めんどくせえことになりそうだぜ・・・。
「なあシカ〜、ワックスつけて簪さしてもいい?」
正面を見れずに暇を持て余していたナルトがシカマルの背中を突付きながらねだった。徹底的に弄ることにしたらしい。
「もう何でも好きにしろ・・・」
ワーイ、とパチンと手を合わせ、手に取ったワックスを髪に揉みこんでいく。
ここまでくると、もうどうなってもよい。早く終わってくれることを祈るのみだ。髪を弄っているナルトの手の感触を味わうぐらいの余裕は出てくる。髪を弄られるのは基本的に嫌いではないのだ。
後ろ髪を残し、サイドと上の髪を手に取り結い上げる。いのの頭に刺さっていた簪を抜き取ると、ナルトはそれを器用に髪に差し込んだ。人には意外な特技があるものだ。どこで習ってきたのか。シカマルは簪の挿し方なんて知らないし、自分の髪を結い上げるのだった一苦労だ。そういう点に関してはとことん不器用なのだ。急いでいるときなどはそこら辺にいる人を捕まえてやってもらう。そんなこんなで、同居しているアスマはシカマルよりも髪を弄るのが上手くなってしまった。
今度はナルトに括ってもらおう・・・
そうシカマルは思った。
ナルトの手の感触を味わっていたら、突然いのが叫んだ。
「出来たーっ!!ねえ、サクラ。今までで一番の出来よねー?!!」
興奮気味にいのはサクラのほうを振り向いた。サクラは目を見開き、信じられない、とでもいうようにシカマルを見詰る。
「確かに・・・。私、シカマルがここまでやるとは思って無かったわ。あーあ、賭けがパアよ・・・」
はあ、とため息を洩らす。
焦らされていたナルトが「どうなんだってばっ」と覗き込むのを「ちょっと待ちなさい」といのが押さえる。そして後ろを振り返り、溜まっていた上忍達に向かって叫んだ。
「どうですか?!改心の出来――っ!!」
ナルトと同じようなことを叫んだいのはナルトを押さえつけながら、どう?どう?と上忍達に目線で訴える。
「おー・・・・」
驚愕で言葉も出ないとでもいうのか。拍手をするものも居れば、頬を赤く染めるものも居る。
鏡などを全く見せられずに、今一自分の今の状況を認識しきれないシカマルが小首をかしげるとそれに対してまた目を輝かせる。
珍獣扱いかよ・・・
と心の中で愚痴っていると、入り口のほうからかすかに呼び声がする。どうやら騒がしくて聞えなかったらしい。そして、呼びに来た人物もこの上忍待機所の異常な盛り上がりに引いているらしかった。
「あのー、奈良上忍いらっしゃいますかー?五代目がお呼びです」
「あ、俺じゃん・・・」
タイミングが悪い。化粧取るやつ、といのに手を出せば、ふざけるな、とばしっと手を叩かれた。仕方なしに座っていた椅子から1時間半ぶりに身体を起こす。座り心地のいい椅子ではないため少々腰が痛い。
一時間半の間に肝が据わったとでも言うのか、「もういいや」と化粧のことを諦める。周りの反応を見る限り、そんなにひどい仕上がりでもないらしい。要するに自分とばれなければいいのだ。
五代目に呼び出されればナルトたちも呼び止めるわけにはいかない。大人しく部屋をさらせれくれるらしい。
やっと開放される・・・
「シカマルー、こっち向いてー!」
「あ?」
いのの突然の呼びかけに無防備に振り向いてしまった。しまった、と思ったときにはもうカメラのフラッシュが光っていた。
「あ・・・・」
「えへへ〜。写真ゲット!!」
このとき初めて姿を目にしたナルトが叫ぶ。
「うわーーっシカマルすげえ綺麗だってばよっ!!一番間違い無しだって!!」
美人だ綺麗だ、といわれても何にも嬉しくない。不細工、といわれるよりは幾分ましだが。興奮して纏わり付いてくるナルトを押しのけ、ため息を連発しながら部屋をあとにした。
上忍待機所と火影の執務室は同じ建物内であるがそれなりの距離がある。廊下を抜け、階段を登り、色々な部署の部室の前を抜ける。その間にじろじろと色々な感情の入り混じった顔を見られ、随分と気分を悪くした頃、やっと火影の部屋の前までたどり着いた。部屋の前には警護の忍が立っている。そこを名前を告げ通らないことには用件は終わらない。
はあ、と息を吐き、肝を据える。
ここまで来たら何やっても同じだ。
ずんずんと進んでゆき名前を告げる。
「奈良ですけど・・・」
全く知らないわけではない、任務の打ち合わせなどでよくこの場を訪れるシカマルにとってはむしろよく知っている人物。両端に立っていた警護の二人が驚いてマジマジと見詰る。
いや・・・、そんな見られても困るんだけど・・・
「え?シカマル?・・・、いや、なんでそんなことに・・・」
「や〜、驚いた。ガタイのいい姉ちゃんだとはおもったけど。まさかシカマルだとはなぁ」
がはは、と笑うものと、驚いて声もでないもの。正反対の反応。
戸の外の騒がしさに気がついたらしい、綱手が中から入ってくるように促した。
「失礼します・・・」
入ると、まず綱手の傍らにたっていたシズネが固まった。珍しく書類に目を通している綱手はまだ気がつかない。
「何外の連中と話してたんだい?めずらし・・・」
漸く顔を上げた綱手もシズネと同じくフリーズした。いい加減周りの反応に慣れてきたシカマルはため息を吐く。
「シ・・・、シカマルくん、どうしたんですか?」
「ちょっと色々と・・・」
自嘲の笑みを口元に浮かべ、目線は空をさまよう。すると、綱手はじいっとシカマルを観察し、ふむ、と口に手をやった。
「へー、あんた、中々見栄えがするねえ。驚いた。ナルトとサスケはある程度予想付いてたけど、まさかあんたがねえ」
綱手の予想外の言葉に今度はシカマルが固まる。
なんで五代目はナルトとサスケのことしてるんだ?ていうか予想って何だ。まさかってなんだ?!
まさか・・・
「もしや五代目・・・、ナルトたちが言ってた賭けとやらに参加しましたね・・・」
しらー、とシカマルは綱手を見る。
「え?!綱手さま、賭けってなんですか?!!賭けたんですか?!!」
シズネに襟元を掴まれ揺さぶられる綱手が必死に弁解した。
「賭けっていっても、子供の遊びみたいなもんだよっ!!千両しか賭けてない!!」
「でも負けたんですね・・・」
じろりと睨むシズネから綱手は目線をそらす。
「・・・」
「つーなーでーさーまーーっ!!」
「まあ、落ち着きなシズネ!!寄付みたいなもんだよっ!どうせ皆負けだ」
綱手が見ていた範囲では、大方の予想がナルトかサスケだったのだろう。シカマルは大穴だった。
「寄付?なんに対してですか?」
真面目にシカマルは綱手に聞いた。どうもこの賭けは自分か知らないことが多すぎる。まだまだなにやら隠れていそうな気配がする。
「ん?あんたなんにも知らないのかい?その賭けで設けた分で飲み会するんじゃないのかい?」
「聞いてません」
「一番になったやつが女装でお酌して回るんだろ?」
「は?!!」
「お前、何にも知らなかったのか・・・」
大声で綱手に詰め寄ったシカマルに憐みをこめた視線を送る。
「あいつら・・・・」
肝心なところを抜かして、というか、全く説明を受けていない。突然やってきて賭けがどうだ女装がどうだとひとの自由時間とつぶしていった。
「その飲み会、今日だよ」
「え?!!だあ、もう我慢ならねえっ!!」
失礼します、と律儀にも挨拶をしてバタン、と勢いよく扉から出て行ったシカマルを綱手とシズネは何も言わずに見送った。
「シカマルくん、まだ用事済んでないんですけどねえ」
「ま、良いさ。今日どうせ飲み会で会うんだし。明日から任務なんだから、程々にしといてやらないとね〜」
楽しそうにしている火影を見て、シカマルに降り注ぐであろう今後の災難をおもいシズネは小さくため息をついた。

シカマルくん、私はあなたの見方ですからね・・・


























▽2004/02/20
そんなことあるのでしょうか。
ま、その非現実性については目を瞑ってください。
お題「お色気の術」は単なる「女装話」で終わってしまいました。
ゴメンなさいっ

ああ、長かった。頑張ったよ〜
何時間書いてたんだろう。
十二時間位でしょうか・・・。
もう朝日が照ってて明るいです。
もうそろそろ寝ないとバイトまでに起きられません。時刻am8:00前

ちなみに題名の「ignorance is bliss」は知らぬが仏、という意味です。
一つ勉強になった


初DLF(ダウンロードフリー)作品です。結構長めでかけたので、ボチボチの読みごたえ?
良ければバンバンもって帰ってやってください。
HPのトップにリンク張ってくれると嬉です。
そして、一言bbsのほうに報告なんかをくれるとさらに嬉しいです。
著作権は放棄しておりませんのであしからず・・・。








































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