何もなかった、といえばそれまでだけど。
私はとてもドキリとしたのです。

いつの間にか、二人の距離は広がっていて

いつの間にか、彼は私の一歩先を行っていたのです。


何故か、とても寂しくなりました。






「背中を追いかけて」






「それでねー。『今日彼氏とデートすることになったから』だってーっ!!
私との約束のほうが早かったのによー?信じらんなーいっ!」

友達との約束をキャンセルされ、一日すっぽりと空いた私はその足でシカマルの家へと出向いた。
直前のキャンセル、しかも男。私を怒らせるには十分だった。
ノックもせずに戸を開けると、ちょっと力が強かったのか部屋に音が響いた。
ベッドで転寝をしていたらしいシカマルの顔の上から伏せられていた本がずり落ち、まだしっかりとは開いていない目が「またお前か・・・」という非難と諦めを語っていた。
許可も聞かぬうちに部屋へと足を進め、家主が今の今まで寝ていたベッドに腰を下ろした。
その勢いで、またベッドが揺れた。

「約束すっぽかされたーーっ!」


そのままの勢いをぶつけるものの、返って来た答えは

「フーン」

もう少し何か反応があってもいいのに。でも、コイツにそんなことを期待することが間違っているというのは
幼い頃から一緒にいた自分が一番知っている。
だから言わない。
別に反応を期待していたわけじゃない。ただ、聞いてほしかっただけ。
あったことを勢いよく喋って、もうどうでも良くなって。
シカマルは相変わらず横になった体制で眠そうにしている。

「あーあー、暇ー」

そう叫んで、眠そうにしている、ヤツの上に背中から倒れてやった。

「う・・っいの・・・っみぞおち・・」
背中の下でシカマルが身をよじる。
「しーらなーい」
「何しにきたんだよお前・・・。ったく」

全体重でのしかかっていた私の背中に手が当てられ、ひょいと起こされた。
いつの間にか、身長も、体力も追い抜かれてた。
背にあたった手のひらも、自分とは比べるまでも無く大きく。
私の体重ぐらいなんともないぐらい、力が強くなってる。
シカマルも男なんだな。
じっとそんなことを感じていたら、不審に思ったシカマルが顔を覗きこんできた。

「何よ」
「・・・、別に」

ベッドから起き上がって、読みかけの本を棚にもどす。
何気ない動作が、月日の流れを感じさせた。
普段は何も思わないけど。
例えば、広い肩だとか、細く長い骨ばった指だとか、喉仏だとか。
近くに居すぎて気にしなかったけれど。

「ていうかさあ、お前。一人で男の部屋に来るなよなぁ。何かあったらどうすんだよ・・・」

私の座っているベッドの正面にある、シカマルお気に入りのシングルソファーに座り、行儀悪く肘置きに足を投げ出す。ベッドと机しかない殺風景な部屋の真ん中にポツンと置いてある黒いソファー。いつもはシカマルがベッドの上に、私がソファーに座る。ソファーはベッドに向かって置いてあるので必然的に顔を付き合わせる格好になる。
私はそのソファーがちょっぴり好きだった。

「何があるっていうのよ。シカマルのくせに」

「別に俺は何もしねえよ。いのだし」

「どういう意味よー。これでも結構もてるんだからねー!」

何もしない、と言われたとき。少しがっかりした自分がどこかにいた。
もてるんだ、と言った自分に、シカマルは「知ってる」と笑った。
彼の笑った顔が、とても大人びて見えた。
私がシカマルのことをみている様に、シカマルも私のことを見ていてくれたんだ。
そのことが嬉しかった。

「俺はいいけど、他のヤツのときは気をつけろよ。でねえと、面どくせえことになるぞ」

なんか持ってくる、と立ち上がった彼に頭をポンと叩かれた。静かに閉じられた戸の外から階段の音が聞えた。

大きい手のぬくもりが頭に残った。



何よそれ。私はそんなヘマしないわ。






■20040910
■続きます。シカいのじゃないです。管理人はどうも、この幼馴染が大好きらしい。
■年齢的には16歳とか?17歳とか。思春期な感じを味わっていただければ・・・
■シカマルもいのもお互い大事なんだよね。性別とか関係なく。
■でも、やっぱり男と女で。成長すると体格差が出てきて。そのことにふと気がつく。みたいな。
■元下忍たちの成長記録、みたいな連載にしたいです。








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