シカマル50のお題より「照れる」
部屋には麝香の匂いが充満していた。
敷かれた布団からむっくりと起き上がった裸体はぞんざいに黒く艶やかな髪を掻き揚げた。
露わになったその顔は、目元、口元が赤い独特の化粧を施されている。
整った顔をより引き立たせ、寝起きの気だるげな雰囲気と相成って大層艶やかだ。
薄暗い部屋を寝惚け眼で見回すと、ふあ、と欠伸を一つ。
枕元に整えられていた着物を羽織り、ゴソゴソとそれなりに支度を整えると窓を開けた。
風が部屋の中を吹きぬけ、立ち込めていた昨夜からの香りが薄くなる。
段々と眠気も覚め一息ついていると、するりと一つの影が入り込んできた。
くすりと笑ってそれを抱き上げる。
腕に抱かれた黒猫は、ニャア、と気持ち良さそうに声を上げた。
その声に笑みを深くし、猫の頭をさすりさすりと撫ぜた。
そして猫を抱えたまま、豪奢な衣を引きずり窓の際へ座った。
窓からは下の通りを行きかう人々の群れが見える。
階級は様々だが、皆の目的は同じだ。
一時の快楽を得るために、みなこの通りを歩いている。
「全員暢気に歩いてやがるぜ。狙われてるなんて、これっぽっちも思ってねぇだろうなぁ。なぁ?」
そう容姿に似合わぬ言葉使いで猫に話しかけるが、猫は知らん振りだ。
つれないヤツ、と腕の中に向かって呟いた。
暫く外をぼやっと見入っていると、部屋の襖が開かれた。
「若」
女が部屋の前に立っていた。二十代後半だろう。
上等だが、派手ではなく上品な小袖を身に纏い、凛とした雰囲気の女性だ。
「んー?何か様?」
だらしない、と顔を顰めたものの、言葉を続ける。
「若が起きられるのをずっと待っていたのですよ。お客様です」
「客ぅ?朝っぱらから?」
「違います。着物をきちんと整えて、お出迎えしてくださいね、゛鈴鳴"」
「・・・、へぇ」
首を傾げながら、返事を返した。
「んで、誰」
髪を見事に結い上げ、髪飾りを鳴らしながら階下に下りた鈴鳴―シカマルは腰に手を当て仁王立ちだ。
「鈴鳴、誰かに聞かれたらどうするんです」
「け、んなヘマ誰がするかよ」
「・・・、お母様に」
う、とシカマルは言葉に詰まった。母に告げ口されるのは非常にまずい、ということは彼は経験上承知している。
ため息を付いてから顔を上げた瞬間には、気高い花魁゛鈴鳴"としてそこに立っていた。
「御客はんはどこに居りますんや。せやけど、こんな朝早ようから、どなたどすの」
その変わり身の早さに、女もニッコリと笑う。そして言う。
「畑カカシさまです。お待ちですよ」
その言葉に何?と顔を顰めたが、とりあえずシカマルは店で働く爺が出してくれた履物を履いて外へ出た。
すると出て直ぐそこのところへ、銀髪を日に煌かせてその男は立っていた。
「や、久し振りー」
にや、と笑った顔にシカマルは踵を返した。
「いや、ちょっと待ってって鈴!」
肩を掴み懇願するカカシに、仕方なく肩越しに振り返る。
「なんどす?こんな朝早うから。忍のあんさんがいらはるなんて、物騒でしゃあないわ」
「そんな事言わずにさあ。ねぇ、お願いだから話聞いてよぉ」
「あんはんがそのにやけた顔を如何にかしてくれはったらな」
つんと可愛らしく顔を背けた。店の前でのこの様子は周りから見ると、馴染みの客と花魁のただの痴話喧嘩に見えたであろう。
「いやぁ、これは仕方がないというかぁ。だって君さあ・・・」
物珍しそうに、足の先から頭の先まで舐めるように観察するカカシに、シカマルはげんなりした。
だからこの姿でこの人には会いたくなかったんだ、と。
「何の用どす?うち、あんはんの相手してるほど、暇やおへんの」
「まぁ、そう言わずにさ。部屋で話そ、ね」
シカマルの肩を抱きこんで、店の暖簾を潜る。何なんだ、といぶかしむ視線で見つめるシカマルにカカシは
お仕事だヨ、とぼそりとシカマルの耳元で呟いた。
それにシカマルは眼を細め、そしてにやりと口端を上げた。
いつの間にか綺麗に整えられた自室にカカシを案内し、丁寧に襖を閉じた。
慣れた様子で着物を捌き座布団に座ると、一応念のため、と結界を張った。
「カカシがわざわざこんなところまで出てくる必要あったわけ?」
会った瞬間からの疑問だ。カカシが来なくても、一族の連絡網で事が足りる。
「大人の世界は色々と複雑なわけよ。今回は奈良家のお仕事じゃなくて、暗部の゛インとしてのお仕事」
「ふーん。ま、何でもいいけど。んで、ターゲットは?」
「喜びなさい。‘ヤツ’の暗殺のお許しかやっと出たよ」
その言葉にシカマルの眼が輝く。
「やっとこの生活からおさらば出来るぜ。慣れてるけど、あんまいい気分じゃねえからな」
あいつにも悪いし、と言ったシカマルにカカシは微笑む。
幼いころからの環境により貞操の観念が非常に薄かったのだが、徐々にだが育ってきているらしい。
「ターゲットは火の国大名ニシン。依頼主は火の国国主。あまりに暴挙が過ぎたということで暗殺の依頼だ。
ただ、火の国の国宝の在り処だけ、聞き出して欲しいということだ」
「了解。よっしゃ!さっさと終わらせて里に帰るかー」
もう一ヶ月以上待機、と言われ此処に留まっているシカマルはそろそろ里が恋しい。
「俺はターゲットに接触中の護衛に付けって言われてるから。いらないだろうけど」
「うん、要らないなぁ」
あっさりとシカマルは答える。
「だろうね・・・。ココ、奈良のお店だもんね・・・」
取り繕うこともなくさらっと答えたシカマルにカカシは肩を落とす。
「任務中は誰かしら見てるぜ?まあそれがカカシだろうが誰だろうがいいけどさあ。今暇なのか?」
なんだかんだといいつつ、カカシは優秀な忍なのだ。
こんなところに伝書鳩代わりに派遣されるなんて、とシカマルは首を傾げる。
「別に暇なわけじゃないけど。今回は偶々俺が暇だったの。それに…」
じーっとシカマルのほうを見つめるカカシにシカマルが身を引く。
「な、なんだよ…」
ジリジリと迫ってくるカカシにシカマルは後ろへと身を倒す。
拳一個分ほどの近距離にまで近づき見つめるカカシにシカマルは眉根を寄せる。
「な、なにか・・・。っぎゃ!!」
がばっと抱きついてきたカカシに押し倒され、シカマルは思わず悲鳴を上げた。
幸いカカシが頭を支えてくれたので頭は打たずにすんだが。
シカマルが眉間に皺を寄せているのも気にせずにカカシはグリグリと頬を擦り寄せる。
「こんなにかわいい格好のシカマルを一度ぐらい見ておかないと!!俺死んでも死に切れないよっ!!」
「だぁあ!!何すんだ、よっ!!」
「でっ!お…、お見事・・・」
シカマルの放った肘鉄が見事にカカシの鳩尾に炸裂し、カカシは倒れこんだ。
「何しにきたんだ、全く・・・」
わけが分からん、と言いたげな目線でカカシを見ながらずり落ちる内掛けを直す。
その様子をカカシはごろりと体勢を変えて見ていた。
元々そんなに痛いわけではない。
「ホントはさ、ナルトに頼まれたんだよね。様子を見てきてくれって」
「え…、ナルト?」
ナルトという言葉にシカマルは反応する。
「心配してたよ。一ヶ月も色の任務だなんて。体は大丈夫なのかなーって、毎日毎日」
「そっか・・・」
俯いたシカマルの顔が赤く染まっているのにカカシは気付き、にっこりと微笑んだ。
アトガキ>
日常?みたいな。
カカシさんいいトコ取りじゃんっ!!でもナルシカ、というわけ分からん作品。
アスマさんとカカシさんは二人のことを見守っていてくれたらいいと思う。
普段はなんともないのに、ナルト相手だと途端に照れだして奥手なシカマルだといい。
てな感じです。
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