ある日突然見知らぬ世界へ足へ突っ込むことも、時にはあるかもしれないよね2(仮題)














着替えのために部屋に戻り、ベッドの上に身を投げ出した。激動の一日に、ナルトは思わず息を吐いた。しかしそれはウンザリしたからではなく、これから始まるであろう刺激的な日々がナルトの心を時めかせたからだ。変わらず学校に通い、勉強をし、友達と遊ぶ。そういう毎日が嫌いなわけではない。だが、こういうちょっぴり危険な日々もかなり好きだったりする。抑えきれない興奮に思わず顔がにやける。

「何ニヤついてやがるんだ」

「っ!」

声に驚き飛び起きると、部屋の入り口にもたれてシカマルが立っていた。ハァ、と溜息をつくと、部屋の中へと進み、ナルトがいるベッドに腰を下ろした。

「どうせお前のことだから、『なんか楽しそうなことになってきたってばよー』とか考えてたんだろうケド」

「う・・・っ、そんなこと、ない、ってばよ・・・」

ジロリとシカマルに睨まれたナルトは、ふっと視線を逸らした。その様子をじいと暫く観察し、仕方のねえヤツ、とシカマルは呟くとナルトに向かって手を払った。どうやら場所を空けろ、といっているらしいことを汲み取り、ナルトは斜めに広がっていた自身の体をを壁際に寄せた。それを見て、シカマルも空いたスペースに身を投げだす。スプリングの利いたベッドに身を横たえ、シカマルの口からは自然に息が漏れた。寝るのに邪魔で、括っていた髪も解く。再び頭を静めると、ベッドの上に真っ黒な髪が広がった。

ナルトは一連のシカマルの動作を隅で小さくなりながら見つめていた。普段じっくりと見ることがないこの同級生は、意外なほど繊細なつくりをしていたことに初めて気付かされる。散らばった、自分とは全く違う綺麗な黒髪に思わず手が伸びた。

「何してんだよ」

「綺麗だなって思って」

「・・・、変なヤツ」

そういうと、シカマルは目を瞑った。ナルトはシカマルの髪を弄りながら静かな声で問う。

「シカマルは、俺のこと守ってくれるんだってば?」

「そうだな、それが今回の任務だし。お前が心配するようなことは何も起きねえよ・・・」

「俺が心配なのはそんなことじゃなくて、シカマルの事だってばよ」

「んー・・・?」

「だって、俺ってば・・・」

―シカマルのこと、好きだから・・・―

規則正しい呼吸を繰り返す、意識を手放したシカマルの頭を撫で、

「シカマルにはあまり無茶して欲しくないってば。何かあったら、俺がちゃんと守るってばよ」

ナルトは身を起こして布団をシカマルに掛けてやる。そして自分は着替えを済ませると、部屋を後にした。

リビングに出ると、白と注連縄が食事を運んでいる最中だった。人数が多いため食卓には治まらず、ソファの方へゲンマやライドウたちは座っていた。食卓イスに腰を掛けていたアスマとカカシはナルトに問う。

「シカマルは?」

「寝ちゃった」

ナルトの答えにカカシとアスマは顔を見合わせ苦笑した。注連縄は少し申し訳なさそうに、シカマルくんお疲れだったからね、と漏らした。それにナルトが首を傾げるとアスマが口を開いた。

「シカマルは今回の下準備のために一週間前からアメリカに行って、昨日帰ってきたんだが・・・。まあ、なんていうか、時差ぼけだな。完全に」

カカシもアスマに続いて言う。

「まあ、時差ぼけもあるけど、アンマリ休む暇がなかったからねぇ今回は。頑張ったほうじゃないの?シカマルにしてはさ」

「まあ、確かに・・・」

カカシの言葉にアスマも同意する。ナルトがアスマとカカシの前に腰掛けると、注連縄がナルトの前に食事を運ぶ。それにナルトは、ありがとう、と返す。

「シカマルくんのは取ってあるから、先に食べようか。ね、ナルト」

注連縄の言葉に、ナルトは頷く。頂きます、と手を合わせると、それに習って皆も手を合わせた。

「あ、起きた?シカマル。おはよ」

「・・・、オハヨ・・・」

ぼそりと一言返すと、ベッドの上に起き上がったまま動かなくなってしまったシカマルにナルトは目をぱちくりさせた。起きてるよね、と思わず顔を覗き込んでいると、廊下から誰かの笑いが聞こえた。

「アスマ先生」

「おはようさん。中々起きてこないと思ったら、やっぱりな。ナルト、こいつに構ってないでさっさと支度したほうがいいぞ。こいつのことを待ってたら日が暮れちまうからな」

朝からタバコの煙を吐き出しながら、アスマは廊下に立っていた。携帯灰皿で火を消してナルトの部屋に入ってきたのは、一応マナーを気にしているからなのか。

「シカマルって寝起き悪かったっけ?そんなイメージないんだけど」

寝ているのはいつのもことだが、普段は欠伸をしながらでもそれなりに反応する。全く無反応で固まってしまったことはない。

「朝はダメだな、基本的に。低体温低血圧の大魔王だからな、こいつは」

シカマルの頭をガシガシとかきまわしたアスマはそれでも反応をみせないシカマルに呆れた表情を浮かべ、シカマルを担ぎナルトを振り返った。

「さっさと着替えて飯くっとけ。こいつ風呂に突っ込んでくるからよ」

「わかったってば」

担がれたシカマルとアスマの後姿を見送って、ナルトはノロノロと着替えだす。プリントTシャツの上にキレイにアイロンが掛かったワイシャツを着込む。壁にかけてあったガクランのスボンをはき、ベルトを締める。

そして考える。長い間シカマルとは付き合いがあるが、思ったほど彼のことを知らない。両親のことも、昔のことも、ありふれた日常のことも。ナルトよりも、幼馴染のいのやチョウジ、そしてカカシやアスマのほうが詳しい。当たり前なのかもしれない。だが、そう簡単に割り切ることが出来ない。心の奥がツキンと痛む。ナルトは胸を掴んだ。

「なんか、悔しいってば・・・」

知れば知るほど、知らないことが増えていく。いたちごっこのようなそれに、ナルトは頭をガシガシとかき回した。そして気合を入れる。

「うん、これからだってばよ!今日も一日がんばるってばよーっ!」

オーっと拳を突き上げ叫んだ後、部屋を飛び出した。

風呂にシカマルを突っ込み、脱衣所で手を拭いていたアスマに、走り抜けながら「負けないってばよ」とケンカを売る。アスマはわけが分らないと言いたげな顔を浮かべたが、ナルトはニイっと笑うだけ。

リビングの扉を開けて、おはよう、と挨拶すると、皆が一同におはようと返した。

あたりには美味しそうな朝食の香りと、ほろ苦いコーヒーの香りが漂っていた。

「負けない、だそうだぞ」

ご機嫌で駆け抜けてナルトに勝負を掛けられたアスマは扉の向こうの人物に言った。

ザーというシャワーの音の向こうから声が返ってくる。

「アスマはナルトと勝負してるのか?俺は関係ないから巻き込むなよ」

その返事にアスマは溜息し、ナルトのいるリビンクに哀れみの目を向けた。こんなに鈍感に育てた覚えはないんだが、とアスマは思う。

「ま、せいぜい頑張れよ」

敵はかなりの鈍感だ。アスマは心の中でエールを送った。











<アトガキ>

短めでスミマセン。
キリがよかったもので(汗)
パラレルをさかさか更新できればいいのですが、なにぶん平日にはPCに触れないものですから。

前回のものと比べて、少しナルシカ?っていうかナル→シカです。
シカナルシカぐらいで進めていきたいものですが、作者にも予想が付かない展開で先の見通しが・・・。
もう暫くお付き合いくださいませ。
感想などございましたら、お手数ですが拍手のほうへお願いします。



2005/10/17
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