春の麗らかな陽気。
任務と任務の間の空いた一日
ぽかぽかとした中、元上司の面倒くさがりな息子と一局打とうか
ついでに最近あった元上司に聞いた『あの事』についても話そう
ぼけーっと窓の外を見ながらタバコをふかしていたが、そう思い立ってタンスから着替えを引っ張り出した。






















陽光
























里の中心から大分離れた、山の麓に里を守るように広大な土地を所有する奈良家。
里の立上時から脈々と続く薬師の家系のその旧家は、里を守るように居を構えている。

初代のころから存在する旧家は大体において里の外側に円を書くように存在する。猿飛家もその例に洩れずだが、薬の原料となる鹿の飼育をしている奈良家ほど敷地は広くない。

中心地から離れて、奈良一族の住む家々を横に見ながら只管道を歩くと一番奥にその家は見えてくる。
木々に覆われている庭先を入ると、元上司・奈良の妻が庭で何かの植物の世話をしていた。家業の関係であろうその植物。綺麗に花を咲かせているが観賞用だとはとても思えない。

こちらに気がついたらしくて手から土を払いながら笑顔で迎えてくれた。
「あらアスマ、いらっしゃい」
「お久しぶりです」
玄関を開けてくれた元上司の妻に軽く挨拶をする。前にここを訪れたのは一ヶ月ほど前。任務報告をしていたら「夕飯でも食ってけよ」と家に連れてこられて以来だ。この家の主はやたらと人を家に招きたがる。騒ぐことがすきなのも勿論だが、生来人が好きなのだろう。よく人の面倒を見ている。一人暮らしのアスマもその一人。
「今日はあの人いないわよ?」
昨日から任務なのよ。そういいながらも家の中に招き入れてくれる。
「いえ、今日は奈良さんでなくて」
「ああ、シカマル?あんた達も好きねえ将棋」
と呆れた顔を浮かべる。アスマは以前は将棋が特に好きだったというわけではない。やる暇もあまりなかったし、あったとしても相手がいなかった。そういうわけで家にあった古い将棋盤は部屋の隅で段々と埃を被り、ついには物置と化していた。それを部屋に父の使いでやってきたシカマルが見つけ出し、珍しく目を輝かせたのだ。シカマルの相手をしているうちに将棋に嵌り始め、終には抜け出せなくなってしまった。どうやっても子供に勝てないものだから、なおさらムキになってしまう。そうやって盤を挟んで向き合っているうちに、子供の世界にのまれて、これまた抜け出せなくなってしまった。将棋がすき、と言われたが、それもまた事実。それとは別に、子供に会いたくて。
奥方に、はは、と苦笑を返し
「それで、シカマルは部屋ですか?」
「あのこは居間の縁側でお昼寝。無理やり起こしたらごねるわよ」
寝起きが悪いのはとっくの昔に知っている。自然に起きるのを待つしかないらしい。起こしてしまったら最後、将棋どころではない。しかし、ソレは目的の一つであって全てではない。

ま、寝顔を眺めてるのも楽しいかもな。

「アスマ、お茶飲む?おいしいお茶請け貰ったのよ」
「頂きます」
台所に入っていった奥方の背を見送って、居間を目指す。燦々と日光の降り注いでいるそこには黒髪を結えた子供が母に掛けられたらしい薄手の布団にチョコンと包まっていた。板の間で痛いだろうに、と思ったが身体の下からは用意周到に座布団が覗いている。周りに散らかっているのは依頼書付の暗号文だったり、どこかの屋敷の見取り図。少々無防備すぎやしないか。
「まったく、コイツは・・・」
回転の良すぎる頭を持て余し、最年少で暗部に入隊したものとは思えないほど平和そうな顔をして熟睡している。こういうところを見ると、まだまだ子供なのだなあと再認識させられる。だが、ここでアスマがすこしでも殺気を出したりしたならば、その瞬間にクナイが飛んでくるだろう。本人からは勿論の事だが、台所に居る母からも。どちみち奈良の敷地内に入った時点で逃げ隠れする場所なんでないのだから無防備もくそもないのだろう。それにだれもこんな子供が機密書を持っているなんて思わないだろう。
シカマルの隣に腰を下ろし、まだまだ小さい頭を撫でた。
「まだ、八歳なんだよな」
まだ。親友のカカシは六歳で中忍になっていたが。この子はまだアカデミーに入学しようかというところだ。そんな歳の子供が里のために手を血で染めている。
感慨深げにそう呟いたアスマの呟きを、子供の母がひろった。
お茶とお茶請けの饅頭をアスマのそばに置き、自らも息子の近くに腰を落ち着けた。
「そうなのよ。まだ八歳。八歳よ?身体だってまだ小さいし!」
子供とよく似た切れ長の眼をきっと向け勢いよく話し出した母に、アスマはびくっとしながらはあ、と相槌をうった。
「でもね、何れにせよいつかは絶対に忍になったと思うの。親がどうとかじゃなく、自分で選んでね。子供が敵を手にかけて辛い思いをするのは嫌だけど、遅かれ早かれそういうことになったのよ。暗部にいること、私はあんまり賛成できないけど。この子には必要だから。生きてる場所が」
「生きてる場所?」
じっと聞いていたアスマが聞き返す。
「頭がちょこーっと、よく出来すぎちゃってさ。自分の周りのことも、里のことも、解り過ぎちゃって嫌なんだと思う。なりふり構わずに、必死になれる。そういう場所が必要なのよ」
たぶんね、と仕方ないというふうに肩をすくめ、話を続ける。
「だから私は、玄関から帰ってきたあのこを迎えてやることだけ。嫌がられようと、暗部にいる間は帰ってきたら思いっきり愛情表現するの」
じゃないと、カカシみたいに歪んじゃうでしょ?
に、と笑ってそういった彼女にアスマは苦笑した。
「歪んだって・・・。いや、まあ否定はしませんけど。友人やってるこっちの身にもなってくださいよ」
以前カカシがやらかしたいろいろなことが頭をよぎる。それを止めるのがアスマだったり、ガイだったり。忍としては頼りになるやつだが友人としては中々苦労の多いやつなのだ。
思い出して、ハア、とため息をついたときに、傍らの子供が身動きした。
「お?起きるかな」
「まあ、これだけ耳元で喋っていれば」
思えば随分と大声で話していた気がする。さてと、とお盆を持って母が立ち上がる。
「じゃ、ゆっくりしてしていってねアスマ」
「ハイ」
「あと・・・」
「?」
「シカマルのこと、宜しくねアスマ」
にっこりと、母の慈愛に満ちた笑みを浮かべた彼女。母は強し、とはこの事か。子供の成長を心から望んでいる。心身ともの健康な成長を。忍の里では色々な問題を抱えた子供が少なくない。幼いながらも暗部に身を置いている子の健康な成長。それは中々困難を極めるだろうが、この母ならば。この母の子ならば。

「はい」
アスマの返事に嬉しそうに笑い、居間を出て行った。
それを見計らったように熟睡から目を覚ましたシカマルは、目を擦り、ぼーっとした目で庭のほうを眺めている。
「起きたか?」
アスマが少し冷めかけのお茶を啜りながら、まだ若干夢の中をさまよっている様子のシカマルに声をかけた。そうすると、子供の目線が庭から自らの隣に移動した。
「・・・。何でアスマが居るの」
「暇だから将棋でもうとうかと思ってよお」
「ふーん。打てば?」
どうでも良さそうに、欠伸をしながらまた布団の中にもぐりこもうとしているシカマルを静止する。
「おいおい、相手をしろよ」
「えー・・・・、めんどくせぇ」
だがしかし、一応客だ。そう考え直したのか、かけていた布団を脇に除け、下に引いていた座布団を一枚譲ってくれた。それをどうも、と受け取りアスマは足の下に敷く。ノロノロと行動を開始したらしいシカマルが、居間の入り口から台所のほうに向かって母親にお茶を頼み、それからドタバタと2階へ駆け上っていった。どうやら将棋盤をとりにいったらしい。
「まだ、子供だなぁ」
ぽかぽかとした陽気を身体に浴びながら、青々とした緑の広がる庭を見る。
あの子供に自分ができることといったら、成長を手助けし、道を見誤らぬよう見守るぐらいか。やってやることよりも、こちらが与えてもらうものの方が多い気もする。それでも、出来うる限りの愛情を。出来うる限りの表現を。

「何ぼーっとしてんだよ」
怪訝そうにしながらシカマルは両手で盤を抱え、その上に駒の入った桐箱とお茶を乗せ少しもこぼさずにすたすたと歩いてきた。ほらよ、と盤を板の間に置き、自分も腰を下ろした。そしてもって来たばかりの湯気の立っているお茶を一口のみ、
「将棋しに来ただけじゃないんだろ?なんか用?」
めんどくせえけど聞いてやるよ、とどうでも良さそうに、駒を盤に並べながら言った。さすがに鋭い子供にニヤリと口元を上げ、同じように駒を並べていく。
「まあ、なんだ、明後日カカシと任務だろ?」
「うん、まあ」
お願いします、とペコっと頭を下げた子供に、こちらこそ宜しくお願いします、と下げ返す。パチ、という駒と盤の弾く音が部屋に響く中、会話は続く。
「そうか。ま、生きてちゃんと帰って来いよ」
ぽん、と頭に手をやり、ぐりぐりと撫で回す。カカシと一緒。それは任務の達成確率が高いことを意味する。おそらく死ぬことはないだろうが、なんとなく、「生きて」という言葉が出た。今までそういうことをこの子にいったことは一度たりともなかった。先ほど交わした母との会話がそうさせたのか。自分らしくもなく感傷的だ。
「止めろって!」
うっとおしい、とアスマの手を振り解き、上目使いでじろりと睨んだ。アスマの微妙な心の動きを読み取るかのようにじいと見つめる。
「ていうかさあ、そんなこというんだったらアスマも来れば」
「は?」
「いや、もとから頼むつもりだったし。人手少ねえしな」
頭をボリボリと掻きながら、めんどくせえなあ、と呟く。
「・・・、だったら早く言えよお前なあ。明後日だぞ?明後日」
急なんだよ。
そう思いながらも、顔を綻ばせる。にや、っと笑い、先ほど邪険にされふりほどかれた手で再びシカマルの頭をバンバンを叩いた。頼りにしてくれたことが嬉しかった。滅多にひとを頼りにしたり、当てにしたりしないこの子が。
「いてえっつうのっ!!なんなんだよ、ニヤニヤしてよお。気持悪ぃなあ」
アスマにかき回されて乱れてしまった頭を押さえつつ、シカマルは汚いものでも見るかのように顔を歪めた。それをぽかっと軽く叩く。
「なんでもねえよ」
カカシと自分とシカマル。今度の任務はなかなか楽しいことになるのではないか。自分にしては珍しく心が躍った。
































▽2004年2月27日
前作から、ボチボチの期間が空きました。
それだけあいて、こんなのしか書けないのか己。
短いしな。
鹿ハハ。よく分かりません。
なんだか、花ゆ○連載中の「○ざかりの君たち」の難波のハハみたくなってしまった。(分かる人挙手お願いします)
偶然です。
一度でてきたときはカリカリ怒ってたけど、きっと愛情たっぷりなんだろう。
と思ってます。
そんなものです、母親って。(分かったような口を利くなよ、自分)

いつか書き直せたら・・・・、イイナ。
そんなのばっかりでスミマセン。
文句など、あったらbbsまで・・・。イタ





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