やってみる33のお題 27「接触を避けてみる」





駅で待ち合わせのはずだった。
そう、そのはずだ。
記憶違いでなければ。
けれどナルトはその場所に立ち続けて、既に30分経っている。
ケータイで連絡を取ってはいるが繋がらず。
ただ、繋がらないことは珍しいことではない。
待ち人のケータイは常にサイレントモードだということを知人たちは皆知っている。
ただ、意外と時間に遅れるということはなく、やむをえない場合にもきちんと連絡が来る。
連絡も来ず、とれずでナルトは身動きが出来ないでいた。
「どうしたんだってばよー、シカマル」
彼がやってくるだろう方向を見て、ため息を付いた。
そのナルトの様子に周囲は興味深々だ。
ここで、少し彼の紹介をしよう。
本名は渦巻ナルト。本人は全く気にしていないが、存外中性的な整った顔をしている上に金髪碧眼。
日本では随分と目立つ。
父が日本で芸能プロダクションを経営しているため、ナルト自身は海外での生活経験がない。
そのため全く英語が話せないし、むしろ成績を英語が引っ張っている。
英語も足を引っ張っている成績だが、世の中顔がよければ案外生きていけるらしく
最近は父のコネも相成って、モデルの仕事もちょくちょく入る。
友達と遊ぶための軍資金ぐらいにはなるので、ナルト的には重宝しているのだが最近困ったことが多い。
「あのー、若しかして、モデルのNARUさんですかぁ?」
「え、・・・人違いです」
「えー、でもー。私凄い大ファンで」
「人違いだから。よく間違えられるんだよねー。ゴメンネ」
このように、町に出ると声を掛けられることが多くなってきた。
人違いです、で通してはいるが、知人には「無理がある」と指摘を受けている。
変装なり何なりすればいいのだろうが、そんなに露出があるわけでもない自分が
変装なんて有名人みたいな真似をするのはなんだか気恥ずかしくて出来ず。
無理がある「人違いです」の会話を既に三組と交わした。
「そろそろ限界だってばよ・・・」
心なしか、人が集まってきている気がする様子に、ナルトは乾いた笑みを浮かべる。
目線を横に流し、意識を飛ばしていたナルトは、また近づいてくる人たちがいることに気が付く。
ヤバイ・・・。もう、いい訳使い尽くした・・・ってかもうそろそろ諦めてくれないかなあ?!!
声に出さないながらも叫びまくっているナルト。
「あのーっ」
―――きたーっ―――
思わず頬を引きつらせたナルトに背後から更に声がかかった。
「おい、ナルト」
「へ?」
本名を呼ばれて思わず振り返ったナルトはそろそろと目線をあげた。
「あ、シカ「「「「キャーーっSHIKAMARU〜っ!!」」」」
駅に響いた人々の声に、シカマルは目を見開いた。
何故こんな騒ぎになるのか彼には理解できなかった。
ここで少し、彼の紹介をしよう。
本名は奈良シカマル。
彼は普通の一般家庭の一人息子・・・、とはいかない。
本人は、普通だ、と豪語しているが、彼は医者の息子だ。
そしてとうの昔に大学を卒業してしまっている。
今はそのときの代わりとばかりに自分の好きなことしまくっている。
暇ついでに通っている高校の同級生であるナルトに誘われ
小遣い稼ぎに仕事を請け負ったのが運の尽きである。
芸能プロダクションを経営するナルトの父が、せこい仕事を愛してやまない息子に回すわけがなかった。
父は、息子を自慢したくて仕方がないのだから。
そんなこんなで有名な雑誌に載ってしまったシカマルだが、ちっともこのような事態を想像していなかった。
彼は、自分の容姿にかなり無頓着である。
なので、自分の名を叫んでいること自体が不思議でたまらない。
何故俺の名前を知っているんだ、と。
「おい、ナルト・・・、一体どうなってんだ・・・」
あまりに鬼気迫る乙女たちの様子に顔が引きつるシカマルに、ナルトは呆れながら告げる。
「シカマル、モデルの仕事やったの忘れてるだろ・・・」
「いや、だってアレは・・・。」
二人は顔を見合わせる。
「「とりあえず、逃げるか・・・」」
ダーっと駅の構外へ向かって走り出した二人の後ろを乙女たちが追いかける。
「「「待ってーーっ!!NARUーーっSHIKAMARUぅーーっ!!!」」」
「待てって言われて待つやつがいるかってばよ」
「同感・・・」
あ、と声を上げ、シカマルはナルトに言う。
「ナルト、そこ曲がれ」
「何で?」
「俺バイクだから」
「シカマル免許持ってたっけ?」
「・・・」
シカマルの沈黙に、ナルトは頬を引きつらせた。
「お、あれあれ。後ろ乗れー」
ナルトの問いに全く答える気がない、というか沈黙が答えだろと言わんばかりのシカマルがキーを回しながら
メットをナルトに手渡した。
「お、おう。ってかお前。このバイク、ハーレーじゃねぇかよ!!」
「だから?」
「無免許の癖にこんなんに乗るなーってか急発進するんじゃねぇよーっ」
段々と小さくなるナルトの声とバイクの爆音が辺りに響き渡った。



「お前勝手に乗ってきたんじゃねえのかよコレ」
「イチオウ言って出てきたけど?」
「おっちゃんは何て?」
「捕まるなって」
「・・・」







▽ファンとの接触を避けてみた。

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